アメリカをドライブ旅行するとき、「時差」と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、日本とアメリカの時差ではないでしょうか。でも、実はアメリカ国内にも複数のタイムゾーンがあり、ドライブ中に「気づいたら時刻が変わっていた!」という経験をする旅行者は少なくありません。
しかも厄介なのは、州をまたいだときだけ時差が生じるわけではないということ。同じ州の中なのに、走っているうちに時刻が1時間変わる——そんな州がアメリカには15州も存在します。
私自身、テネシー州をドライブ中にこれを体験しました。Nashvilleを出発してRuby Fallsへ向かう途中、スマートフォンの時刻が突然1時間進んだのです。「え?同じテネシー州なのに?」と焦りましたが、これがアメリカのタイムゾーン事情のリアルです。
この記事では、アメリカへの旅行を計画している方や、アメリカ在住でドライブ旅を楽しんでいる方に向けて、知っておいた方が良いタイムゾーンの知識をまとめました。
アメリカにはタイムゾーンが4つある
日本に住んでいると「時差」といえば国と国の間のもの、というイメージが強いですよね。ところがアメリカは国土が広大なため、国内だけで4つの主要タイムゾーンが存在します。東海岸から西海岸まで、端から端まで3時間もの差があります。
4つのタイムゾーンと日本との時差

| タイムゾーン | 略称 | 主な州 | 日本との時差 (標準時) | 日本との時差 (夏時間) |
|---|---|---|---|---|
| Eastern Time | ET | ニューヨーク、フロリダ、テネシー東部など | −14時間 | −13時間 |
| Central Time | CT | テキサス、イリノイ、テネシー西部など | −15時間 | −14時間 |
| Mountain Time | MT | コロラド、ユタ、アリゾナなど | −16時間 | −15時間 |
| Pacific Time | PT | カリフォルニア、ワシントン、オレゴンなど | −17時間 | −16時間 |
東から西へ行くほど時刻が遅くなり、1タイムゾーンごとに1時間ずつ差が生じます。たとえばニューヨークが正午のとき、ロサンゼルスはまだ午前9時です。
日本との時差のイメージ
日本時間を基準にすると、感覚的にはこう覚えておくと便利です。
- 東海岸(ET):日本の昨日の夜10時が、ニューヨークの朝9時(夏時間)
- 西海岸(PT):東海岸からさらに3時間遅れ
長距離フライトでアメリカに到着する方は、まず「どのタイムゾーンに降り立つか」を意識するだけで、到着後のスケジュール管理がぐっとラクになります。
アラスカとハワイは別タイムゾーン
本土48州の4タイムゾーンに加え、アラスカとハワイはそれぞれ独自のタイムゾーンを持っています。
- Alaska Time(AKST):太平洋時間より1時間遅れ。アンカレッジやジュノーが該当。アラスカ州内を旅する分には基本このタイムゾーンで統一されているので、特別な混乱は起きにくいです。
- Hawaii-Aleutian Time(HAST):ハワイ全島が該当。アラスカのアリューシャン列島西端もここに含まれますが、一般的な旅行者が訪れる機会はほぼないエリアです。
ただし、これだけ把握していれば安心——とはまだ言えません。実はここに、もう一つ大きな落とし穴があります。それがサマータイム(夏時間)と、同じ州内での時差です。次のセクションで詳しく見ていきましょう。
実体験:同じテネシー州なのに時差で焦った話

夫婦でNashvilleを出発し、Ruby Fallsを目指してドライブしていたときのことです。Ruby FallsはChattanooga近郊にある鍾乳洞の滝で、見学には時間指定の事前予約チケットが必要。予約時間から逆算しながら「このペースなら余裕だね」と話しつつ走っていました。
ところが、Nashvilleから東へ進む途中で、スマートフォンの時刻が突然1時間進みました。NashvilleもRuby Fallsも同じテネシー州。まさか時差があるとは夢にも思っていなかったので、一瞬何が起きたのか理解できませんでした。
テネシー州は西部がCentral Time、東部がEastern Timeに属しています。 NashvilleはCentral Time、ChattanoogaはEastern Timeのエリアにあるため、東へ走るにつれて時刻が1時間進むのです。
「余裕だね」と話していたはずが、気づけば予約時間の15分前。トイレに寄る時間すらギリギリで、なんとか滑り込んだ形でした。もし当日の旅程が少し遅れていたら、せっかく予約したツアーに間に合わなかったところです。
この経験があったからこそ、「アメリカでは同じ州内でも時差が発生することがある」と学びました。そして調べてみると、同じ状況がテネシー以外にも14州で起こりうることを知り、驚いたのを覚えています。
同じ州なのに時差がある?タイムゾーンが複数ある15州を確認

「州をまたいだら時差に気をつけよう」と思っているだけでは不十分です。アメリカには同じ州の中に2つのタイムゾーンが存在する州が15州あります。
州境を越えていないのに時刻が変わる——これがドライブ旅行者にとって最も気づきにくい落とし穴です。
特に旅行者が注意すべき6州
観光ルートに含まれやすい6州を詳しく紹介します。
テネシー州(Central ↔ Eastern)
西部がCentral Time、東部がEastern Time。Nashville(西部)からChattanooga・Ruby Falls方面(東部)へ東進すると、時刻が1時間進みます。人気観光地のグレート・スモーキー・マウンテンズ国立公園もEastern Timeエリアにあるため、Nashville起点でドライブする方は要注意です。
フロリダ州(Eastern ↔ Central)
フロリダ半島の大部分はEastern Timeですが、パンハンドル(州の西側に細長く伸びたエリア)と呼ばれる地域——Pensacola、Panama Cityなど——はCentral Timeです。マイアミやオーランドから西へ車を走らせる旅程では、切り替わりのタイミングを意識しておきましょう。
インディアナ州(Eastern ↔ Central)
インディアナ州の大部分はEastern Timeですが、シカゴに隣接する北西部の6郡と、南西部の6郡の計12郡がCentral Timeに属しています。歴史的に複雑な経緯があり、2006年まで郡ごとにサマータイムの扱いが異なるという非常に混乱しやすい状況が続いていました。ミシガンからシカゴに向かう際、インディアナの北西部を通過するのですが、インディアナ州に入った瞬間、セントラルタイム(シカゴ(イリノイ)と同じ時間)に切り替わります。
ケンタッキー州(Eastern ↔ Central)
Louisville、Lexington、フランクフォートなど主要都市はEastern Timeですが、Bowling GreenやPaducahなど西部の都市はCentral Timeです。テネシー州との州境付近をドライブする旅程では、テネシーとケンタッキーの両方でタイムゾーンが入り組む可能性があります。
テキサス州(Central ↔ Mountain)
テキサス州のほぼ全域はCentral Timeですが、El PasoとHudspeth郡のみMountain Timeです。テキサスは国土の広さで有名ですが、El Pasoは地理的にはニューメキシコ州寄りに位置するため、他のテキサスの都市とは異なるタイムゾーンになっています。テキサスを横断してニューメキシコ方面へ抜けるルートでは意識しておきましょう。
アリゾナ州(Mountain Time・特殊)
アリゾナ州はサマータイムを採用していないという点で特殊です。通常、Mountain Timeの州はサマータイム期間中にMountain Daylight Time(MDT)へ切り替わりますが、アリゾナは年間を通じてMountain Standard Time(MST)のままです。
さらに複雑なのが、州内のNavajo Nation(ナバホ族居留地)の扱いです。アリゾナ州はサマータイム不採用ですが、ナバホ族居留地だけは例外的にサマータイムを採用しています。つまり、アリゾナ州内なのに、エリアによって夏の時期だけ1時間の時差が発生するという二重の例外が存在します。
これが旅行者に直撃するのが、アンテロープキャニオンです。
世界的に有名なこの絶景スポットを訪れる多くの旅行者は、近隣の街Pageを起点にします。Pageはアリゾナ州内にあるためサマータイム不採用。ところがアンテロープキャニオン自体はナバホ族居留地内に位置するため、夏の時期はサマータイムが適用され、Pageとの間に1時間の時差が生じます。
アンテロープキャニオンはガイドツアーへの参加が必須で、チケットは時間指定の事前予約制です。「Pageのホテルを出れば余裕で間に合う」と思っていても、この1時間の差を見落とすと予約時間に遅刻する可能性があります。夏にアンテロープキャニオンを訪れる際は、ツアーの集合時間がPage時間かナバホ時間かを必ず確認しましょう。
その他の9州(参考一覧)
以下の州も複数のタイムゾーンを持ちますが、一般的な観光ルートでは意識する機会が少ない州です。
該当エリアを旅行する際の参考にしてください。
| 州 | タイムゾーン |
|---|---|
| カンザス州 | Central ↔ Mountain(西部4郡のみMountain) |
| ネブラスカ州 | Central ↔ Mountain(西部がMountain) |
| ノースダコタ州 | Central ↔ Mountain(西部がMountain) |
| サウスダコタ州 | Central ↔ Mountain(東部Central・西部Mountain) |
| アイダホ州 | Pacific ↔ Mountain(北部Pacific・南部Mountain) |
| オレゴン州 | Pacific ↔ Mountain(東部の一部がMountain) |
| ネバダ州 | Pacific ↔ Mountain(東部の一部がMountain) |
| ミシガン州 | Eastern ↔ Central(上半島の西端部分のみCentral) |
| アラスカ州 | Alaska ↔ Hawaii-Aleutian(アリューシャン列島西端のみ) |
サマータイム(夏時間)とは?日本人が混乱しやすい理由
アメリカのタイムゾーンを複雑にしているもう一つの要因が、サマータイム(Daylight Saving Time/DST)です。日本にはない制度なので、初めてアメリカを旅行する方や渡米したばかりの方には特にわかりにくく感じるポイントです。

サマータイムとは
サマータイムとは、夏の時期に時計を1時間進める制度です。日照時間が長い季節に合わせて活動時間をシフトさせることで、エネルギーの節約や生活の効率化を図ることを目的としています。
アメリカでは以下のタイミングで切り替わります。
| 切り替え | 時期 | 変化 |
|---|---|---|
| サマータイム開始 | 3月第2日曜日・午前2時 | 時計を1時間進める |
| サマータイム終了 | 11月第1日曜日・午前2時 | 時計を1時間戻す |
つまり、3月〜11月初旬はサマータイム期間中、それ以外は標準時(Standard Time)ということになります。
アメリカを旅行する方の多くが訪れる夏休みや春休みのシーズンはサマータイム期間中にあたるため、旅行者にとっては「サマータイムの状態がデフォルト」と思っておくくらいでちょうどいいかもしれません。
日本との時差がサマータイムで変わる
サマータイム期間中は時計が1時間進むため、日本との時差が1時間縮まります。
- Eastern Time:標準時は−14時間 → 夏時間は−13時間
- Central Time:標準時は−15時間 → 夏時間は−14時間
- Mountain Time:標準時は−16時間 → 夏時間は−15時間
- Pacific Time:標準時は−17時間 → 夏時間は−16時間
サマータイムを採用していない例外がある
アメリカ全土でサマータイムが適用されるわけではありません。代表的な例外がアリゾナ州です(ナバホ族居留地を除く)。前のセクションで触れたアンテロープキャニオンの時差問題も、このサマータイムの例外が生み出しています。
また、ハワイ州もサマータイムを採用していません。ハワイは一年を通じて日照時間が安定しているため、時計を動かす必要性が低いとされています。
切り替わり直後は特に注意
サマータイムの切り替えは日曜日の午前2時に行われます。旅行中にこのタイミングが重なることはそう多くありませんが、もし切り替わり直後の週に旅行する場合は注意が必要です。特に以下のようなケースでトラブルが起きやすいです。
- フライトやバスなどの交通機関の時刻表が前日と変わる
- ホテルのチェックアウト時間の認識がずれる
- 事前予約したツアーやアクティビティの時間を誤って計算する
スマートフォンは自動で時刻が切り替わりますが、アナログ時計や一部のカーナビは手動での修正が必要です。旅行中は極力スマートフォンの時刻を基準にするようにしましょう。
アメリカドライブのヒントータイムゾーンを考慮に入れた計画を
アメリカのタイムゾーン事情を頭に入れたうえで、実際のドライブ旅行でどう活かすかをまとめました。「知識として知っている」と「旅行中に実践できる」は別物です。ちょっとした習慣を身につけるだけで、タイムゾーンによるトラブルをほぼ防ぐことができます。

旅行前にやっておくこと
① 翌日の目的地のタイムゾーンを確認する
ルートを組む段階で、宿泊地や主要な立ち寄りスポットがどのタイムゾーンに属するかを調べておきましょう。特に本記事で紹介した15州を通過する旅程では、事前確認が欠かせません。Googleマップで目的地を検索すると現地時間が表示されるので、出発前夜に翌日のルートをざっと確認する習慣をつけると安心です。
② アクティビティ・ツアーの予約時間は「現地時間(Local Time)」で再確認する
オンラインで事前予約するツアーやアクティビティのチケットには、予約確認メールに記載された時間が現地のどのタイムゾーンの時間なのかを必ず確認しましょう。アンテロープキャニオンのように、起点となる街と目的地のタイムゾーンが異なる場合は特に注意が必要です。予約時間の1時間前を目安に現地入りすることを心がけると、万が一の時差の見落としにも対応できます。
③ サマータイムの切り替わり時期と旅程が重なっていないか確認する
旅行日程が3月第2日曜日または11月第1日曜日をまたぐ場合は、切り替わりのタイミングを意識しておきましょう。特に移動日と重なる場合はフライトや乗り継ぎの時刻に影響が出ることがあります。
ドライブ中に意識すること
④ スマートフォンの時刻を常に基準にする
タイムゾーンをまたいだとき、スマートフォンは自動的に現地時間へ切り替わります。カーナビや腕時計は手動修正が必要なものが多いため、時刻の基準は常にスマートフォンに統一するのがおすすめです。
⑤ 時刻が突然変わっても慌てない
ドライブ中にスマートフォンの時刻が突然1時間変わったら、タイムゾーンの境界を越えた合図です。東へ進んでいれば1時間進み、西へ進んでいれば1時間戻ります。焦らず、その時点での残り時間と目的地までの距離を落ち着いて再計算しましょう。
⑥ 長距離ドライブの日はスケジュールに余裕を持たせる
タイムゾーンをまたぐ可能性があるルートでは、アクティビティや食事の時間に余裕を持たせたスケジュールを組むのが鉄則です。「ちょうど間に合う」計算で動くと、時差の見落とし一つで取り返しがつかなくなります。私自身のRuby Fallsでの経験がまさにそれで、たまたまスケジュールが早く進んでいたから良かったものの、ギリギリの旅程だったらアウトでした。
こんな便利ツールも活用しよう
- Googleマップ:目的地を検索すると現地時間が表示される。ルート検索時の到着予想時刻も現地時間で表示されるので非常に便利。
- 世界時計アプリ:複数のタイムゾーンを同時に表示できる。旅程中に通過する都市を登録しておくと一目で時差が確認できる。

- スマートフォンの標準時計アプリ:iPhoneもAndroidも、複数都市の時刻を並べて表示できる機能がある。出発前に主要な立ち寄り都市を登録しておくと便利。
まとめ
アメリカのタイムゾーンは、知っているだけで旅の安心感がまったく変わります。最後に、この記事のポイントを振り返っておきましょう。
- アメリカ本土にはEastern・Central・Mountain・Pacificの4つのタイムゾーンがあり、東から西へ1時間ずつ遅くなる
- 同じ州内に2つのタイムゾーンを持つ州が15州存在する。州境を越えていなくても時刻が変わることがある
- 旅行者が特に注意すべきはテネシー・フロリダ・インディアナ・ケンタッキー・テキサス・アリゾナの6州
- アリゾナ州はサマータイム不採用だが、ナバホ族居留地(アンテロープキャニオンなど)のみ例外的にサマータイムを採用しており、夏の時期は州内でも時差が発生する
- サマータイムは3月第2日曜〜11月第1日曜。この期間は日本との時差が1時間縮まる
- 時刻の基準は常にスマートフォンに統一し、ツアーの予約時間は必ず現地時間(Local Timeで再確認する

アメリカのドライブ旅行は、広大な国土をじっくりと感じられる最高の旅のスタイルです。タイムゾーンの落とし穴をあらかじめ確認して、思い切り楽しんでください!良い旅を!






